コンセプト

起業やイノベーションに関する従来の研究は、政府の経済成長促進政策を、シリコンバレーの成功に照らして検証し、政府主導の多くの取り組みは計画が不十分で、シリコンバレーの成功要因を理解していない、と結論していた。これは、イノベーション・エコシステムの創出や発展に興味がある者、あるいは熟知している者にとって驚くべきものではない。それにもかかわらず、政府は、経済危機やその後の景気低迷による大打撃を受けて、イノベーションや起業を後押しする新たな役割を担おうとしている。たとえば、2013年2月22日に「健康・医療戦略推進本部」が内閣官房に設置されたことや、2014年5月23日に「健康・医療戦略推進法」の成立はこの好例であろう。こうした中、政府は、民間企業や大学、研究機関との提携を強化している。このような産官学連携は、さまざまなアクター間の相互作用の構造やそれが生み出すダイナミクスを梃に、イノベーションや価値創造を推進する知識集約型サービスクラスターを生み出す方向へ動き始めている。実際、産官学連携は、起業家やほかのアクターの公式・非公式のネットワーク形成において、今後、重要な役割を果たすことが想定される。かかる状況下にあって、シンポジウム参加者が議論すべき重要な課題は、「産官学連携がうまく機能するために必要なことは何か」ということである。
また、イノベーション・エコシステムの発展における知的財産およびベンチャーキャピタルの役割に関する課題もある。単純に考えると、デス・ヴァレー(死の谷)を乗り越えて成功し、グローバル企業へと飛躍したい新興企業を支援するのに必要な公的資金や民間資金へのアクセスを改善することなくしては、産官学連携は期待されるほど成功しない。さらに、新興企業の成長初期段階から中盤にかけてだけではなく、さらに成長が期待できる中小企業の成長段階においても、金融資金(マネージメント支援を含む)が必要である。
今回のシンポジウムでは、「成功している」イノベーション・エコシステムの構造とダイナミクスに焦点を当て、報告者は、考え得る欠陥を検証する。そしてより重要なこととして、こうしたエコシステムにおける調査と実施のバランスを回復、維持するのに役立つ改善点を提案する。

議論すべき課題の一例は以下のとおりである。

  • イノベーション・エコシステムにおける知的財産の役割は何か?
  • 知的財産はベンチャー投資家にアピールできるリソースと見なしうるか?
  • 協同資金調達モデルとプラットフォームは統合的・持続可能な投資アプローチを確実にするために開発されるべきか?
  • 政府の協同投資スキームにとってもっとも効果的なデザインとは何か?
Pre-IPO市場(最近、NASDAQによって導入された)やベンチャーキャピタル・リミテッド・パートナーシップ持分の証券化など他の手段によって、創業初期の投資家、従業員、ファウンダー達に投資を流動化する手段を与えるべきか?